ウイスキーについて

丸い氷、厚みのある重たいグラス、注がれた琥珀色の飲み物。お父さんが夜中に一人で飲んでいるそれはとても美味しそうで、ずっと憧れていました。でもこっそり一口だけ飲んでみたら辛くてお酒臭くて全然美味しくない。お父さんは何でこんなものを大切にしているんだろうと不思議に思ったことを覚えています。今では私もその魅力に取り憑かれている一人です。あの頃の父の嬉しそうな顔を思い浮かべながら、ウイスキーの魅力について語りたいと思います。

ウイスキーとは

ウイスキーは蒸留酒の一つで、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化し、これを発酵させ蒸留したものです。「ウイスキー」という名称は、ラテン語の「aqua vitae」に由来します。これは「命の水」という意味で、元々はぶどう酒を蒸留したもの、つまり今でいうブランデーを指す言葉でした。aqua vitaeは1300年代にジェノアなどのイタリアの貿易都市から外交官・貿易業者・各国からイタリアに留学していた修道士や学生たちの手によってヨーロッパ各地に広まりました。直後の15世紀初頭にはaqua vitaeの製法そのものも各地に広まるようになり、ブドウだけでなく大麦や小麦、ライ麦、果物、ジャガイモなど、各地で手に入る材料を用いて製造されるようになりました、当時aqua vitaeは嗜好飲料ではなく薬品の扱いでした。スコットランドやアイルランドではaqua vitaeをゲール語に逐語翻訳した「uisce beatha(命の水)」の「水」の部分「uisce(ウィシュケ)」が訛って「ウイスキー」となったのだそうです。

ウイスキーの製法

ウイスキーの一般的な製法は、麦を発芽させ、その麦芽に含まれる酵素を利用してデンプンを糖化させるところから始まります。この方法自体はビールの仕込みとほぼ同じであり、これを濾過して麦汁を得て、これを酵母によって発酵させます。そうすると、アルコール度数7~8%の「ウォッシュ」と呼ばれる液体になります。これを単式蒸留器で蒸留します。一般に、複数回の蒸留を終えた際の液体はニューポットと呼ばれ、アルコール度数は60~70%で、色は無色透明のものが出来上がります。蒸留液は木製の樽に詰められ、数年以上熟成させることによって豊かな風味と色を呈するようになります。ウイスキー原酒は熟成により、樽ごとに異なる風味に仕上がるものであり、最終的にはこのいくつかの樽の原酒を調合し、香味を整えてから度数をお40%程度まで加水し、瓶詰めされて出荷されます。また、低価格品でも高級品でも、同一メーカーのものであれば同じ原料と同じ製法であるところが、日本酒やワインなどの醸造酒とは大きく異なる点でもあります。

ウイスキーの歴史

「ウイスキー」という名称が歴史上はじめて文献に登場したのは、1405年のアイルランドでした。しかし15世紀当時は嗜好品としての飲用ではなく、薬として使われていました。このときウイスキーは修道士たちによって製造されていました。この1405年にはポーランド・サンドミェシュ市地方裁判所の公文書で「ウォッカ」の名称が使われており、奇しくもこれがウォッカの名称に関して現存する最も古い記録となっています。当時のウイスキーとウォッカは同じものを指していました。スコットランドでも1496年に記録が残っています。最初に蒸留アルコールが製造されたのは8世紀から9世紀にかけてであり、その場所は中東だったそうです。蒸留の技術は、キリスト教の修道士らによってアイルランドやイギリスにもたらされたといわれています。しかし、蒸留の技法は収穫後の過剰な穀物を加工する手段として、アイルランドやイギリスにおいても農民によって発見されていた可能性があるという説もあります。

ウイスキーの飲み方

ウイスキーの飲み方は実に多種多様です。そのまま飲むもよし、水割りにするもよしですが、最近ではソーダで割ったカクテル・ハイボールが特に人気ですね。ウイスキーはビールや焼酎のようにがばがばと飲むものではなく、ちびちびと飲むのが正解です。正しい飲み方を知り、大人の嗜みを身につけましょう。

ストレート
ウイスキーはアルコール濃度が40%以上と高いので、ストレートで飲む場合はチェイサー(水)を用意しましょう。チェイサーとウイスキーを交互に飲むことで、胃や腸への刺激を和らげるだけでなく、ウイスキーの重厚な舌触りや圧倒的な香気をより一層味わうことができ、清涼感とともに香りの余韻を楽しめます。
水割り
水とウイスキーの比率を変えることで、様々に変化する味わいを堪能できます。また、水のおかげでまろやかさが強調されるので飲みやすくなります。オススメは水とウイスキーを1対1で割り、氷をいれずに呑む「トワイス・アップ」です。これはブレンダーが試飲の際に用いるのみ方で、ウイスキーの味や香りを引き出してくれる飲み方として親しまれています。
オン・ザ・ロック
大きめの氷を入れたグラスにウイスキーを注いで飲む方法です。徐々に溶ける氷とウイスキーの陽炎を眺めながらゆったりとした時間を過ごすと、まさに「大人の時間」という感じがしてきます。ただしあまりのんびりしすぎると、氷が完全に溶けてしまい、ただの水割りになってしまうので注意が必要です。
ハイボール
ソーダで割って飲む方法です。すっきりとした味わいと飲みやすさで近年じわじわと人気になって来ています。最近はソーダ割りだけでなく、ジンジャーエールで割ったものやゆずリキュールを入れたものなど色々な種類がありますが、美味しいウイスキーはぜひシンプルなソーダ水で味わってみてください。
マンハッタン
カクテルの女王とも言われるマンハッタンは、ニューヨークのマンハッタンに落ちる夕日をイメージして作られたのだそうです。ウイスキーをベースにスイート・ベルモットとアンゴスチュラ・ビターズをミキシングしてチェリーを飾ったものがそれです。映画「お熱いのがお好き」でマリリン・モンローが飲んでいたことでも有名ですね!

ウイスキーの材料別種類

モルト・ウイスキー
スコッチ・ウイスキーでは大麦麦芽(モルト)のみを原料とするものの事を言います。アメリカン・ウイスキーでは、大麦が原料の51%以上を占めるものを指します。一般的に単式蒸留釜で2回か3回蒸留します。少量生産に適している伝統的な製法です。品質の安定が難しく、大量生産には向いていません。なお、アメリカン・ウイスキーにおいては大麦のみを原料とするものをシングルモルト・ウイスキーと呼びますが、スコッチ・ウイスキーでは1つの蒸留所で作られたモルトウイスキーのみを瓶詰めしたものを指します。
グレーン・ウイスキー
トウモロコシ、ライ麦、小麦などを主原料とするものです。連続四季蒸留機による蒸留を経るため、モルトウイスキーに較べて香味に乏しく、通常はブレンデッドウイスキーに加えられ、風味を和らげる役割を果たしています。しかし高級モルトウイスキーと同じく長期熟成を行ったシングル・グレーンの最終商品も稀少ながら発売されています。
ブレンデッド・ウイスキー
スコッチ・ウイスキーにおいては、モルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンドしたものです。大量生産や品質の安定に適しています。アメリカン・ウイスキーにおいては、ストレート・ウイスキーに他のウイスキーまたはスピリッツを混ぜたものを指します。
ライ・ウイスキー
主に北アメリカで生産されているウイスキーです。ライ麦主原料としています。カナダとアメリカ合衆国でそれぞれ異なった定義があります。
コーン・ウイスキー
トウモロコシを原料とするウイスキーです。バーボン・ウイスキーのうち、全材料80%以上にトウモロコシを用いたものを指します。

ウイスキーの産地別種類

ウイスキーは産地によって原材料や製法に違いがあり、味や香りもまったく違うのが特徴です。

世界の五大ウイスキー

  • スコッチ・ウイスキー・・・英国スコットランドのウイスキー。仕込みの際に、泥炭(ピート)で麦芽を燻蒸するため、独特の香気があるのが特徴。
  • アイリッシュ・ウイスキー・・・アイルランド共和国と英国北アイルランドで造られるウイスキー。ピートによる燻蒸を行わないことと、単式蒸留機による蒸留回数が3回であることが特徴。
  • アメリカン・ウイスキー・・・アメリカ合衆国で醸造されるウイスキー。他の地域のウイスキーではあまり用いられないトウモロコシを原料として用いる特色がある。
  • カナディアン・ウイスキー・・・カナダ原産。トウモロコシを主原料とするベース・ウイスキーをライ麦を主原料とするフレーバーリング・ウイスキーをブレンドして作られる。
  • ジャパニーズ・ウイスキー・・・日本産のウイスキー。トリスウイスキー、サントリーレッドなどの廉価ブランドから、山崎、響、余市などの高価格ブランドまで幅広い。

その他の産地

ウェルシュ・ウイスキー
古くから英国ウェールズで醸造されていたウイスキーです。1894年に一度この歴史が途絶えたのですが、2000年に製造が再開され、2004年3月1日に出荷されました。
ドイツのウイスキー
ドイツではスコッチ原酒を国内で熟成・ブレンド・瓶詰めしたレベルの高いウイスキーを生産しています。
インドのウイスキー
インドではイギリス植民地時代からスコッチウイスキーの製法に準じたウイスキーを製造しており、現在では5大ウイスキに次ぐ生産量を誇っています。
タイ・ウイスキー
タイでのみ生産されているウイスキーで、メコンウイスキーとも呼ばれています。ウイスキーと冠していますが、焼酎の仲間です。米と糖蜜を主原料とし、発酵させたものを蒸留し、ウイスキーの香りを付けています。他のウイスキーより甘みが強いのが特徴です。代表的なウイスキーの銘柄は「メコン」「センソム」「リージェンシー」「ブラックキャット」「ブラックタイ」「センティップ」などがあります。秋篠宮文仁親王もタイウイスキーのファンなのだそうです。日本で一般的な飲み方のほかに、特殊なものとして、ストレートを半口とミネラルウォーターを交互に飲む方法や、タイ漢方薬などの薬草と混ぜて上記の方法で飲むヤードーンと呼ばれる方法があります。